「漢方周期療法」の基本

中医学では、不妊の主な原因を「腎虚」と捉えていますので、体のエネルギー生産力と生殖力(妊娠力)を高める「補腎」という漢方治療を中心に行ないます。

「腎虚」では、卵胞の成長発育に問題がある場合が多いことから、治療は卵胞を育てることを重視し、またホルモン系統を中心に体調を整えることによって、月経痛・月経不順・子宮内膜症などの改善も同時に行なうことが可能になります。

ここで言う「腎」とは、ホルモン系統・免疫能・エネルギー生産力・生殖力、などを指しています。

さて月経周期は、月経期・卵胞期・排卵期・黄体期の4つの周期に分けられますが、それぞれの期において分泌されるホルモンの種類や量も異なりますし、体温も大きく変動します。

そこで「漢方周期療法」では、それぞれの期に合わせて複数の漢方薬を使い分けるのです。

用いる漢方薬は、その人の体質や体調などから見極めた「証」や中医学による「弁証論治」を基本に、基礎体温を参考にしながら決めて行きます。

こうしてそれぞれの期ごとにその人に適した漢方薬を服み分けていくうちに、基礎体温表が徐々に整ってきます。

治療による体の変化が、基礎体温表のカーブに如実に表れてくるのです。

つまり、より妊娠しやすい体になっていくわけで、「漢方周期療法」ではこの状態を目指して治療を続けていくのです。

また、不妊専門クリニックなどの医療機関で、ホルモン療法(卵巣刺激)や体外受精などの不妊治療を受けながら、「漢方周期療法」を行っている人も少なくありません。

4つの”期”と主な漢方薬

周期表

月経期

これまでの主要な内膜層を全てきれいにはがし溶かして、月経血として体外に排出する時期です。

次の周期の新しい子宮内膜を再生するために、赤ちゃんが宿る部屋の大掃除をします。

漢方薬は、血行を促進する活血薬と、子宮の筋肉や血管の運動リズムをスムーズにする理気薬を服用します。
(五味調経散、温経湯、少腹逐瘀湯、血府逐瘀湯、逍遥散、冠心Ⅱ号方、冠元顆粒、折衝飲、田七人参など)

dennsiti田七人参(にんじん)人参

卵胞期(低温期)

卵巣内では通常1個の卵胞(主席卵胞)が成熟し、子宮内膜は粘膜層の再生と増殖を始めます。

子宮と卵巣に栄養とホルモンを十分に供給することが大切です。

漢方薬は、卵胞の成熟と子宮内膜の再生と増殖を助けるために、補血薬と滋陰薬を服用します。
(滋陰養血湯、六味地黄丸、杞菊地黄丸、婦宝当帰膠<当帰養血膏>、四物湯、マカ、鼈甲、紫荷車など)

kikuka菊花akayajiou地黄

排卵期

卵巣内の成熟卵胞から卵子が腹腔内に飛び出し、卵管采に捕えられ卵管の中へと入っていきます。

卵子が飛び出したあとの卵胞は、黄体という組織に変化し、黄体ホルモンを分泌して黄体期(高温期)へと移行します。

漢方薬は、ホルモン分泌の連携をスムーズにし(卵胞ホルモンから黄体ホルモンへ)、確実に排卵そして黄体化へとつなげるために、活血薬と理気薬を服用します。
(活血排卵湯、逍遥散、参茸補血丸、冠心Ⅱ号方、冠元顆粒など)

柴胡(さいこ)生姜

逍遥散より 柴胡・生姜

黄体期(高温期)

受精卵を着床・養育できるように準備を整えます。

黄体ホルモンの作用で、子宮内膜へ栄養と多量の血液が送り込まれ、 受精卵のための”温かいフワフワベッド”を作ります。

漢方薬は、安定した高温期の維持を助けるために、補陽薬と補気血薬を服用します。
(補腎助孕湯、右帰丸、参茸補血丸、至宝三鞭丸、海馬補腎丸、十全大補湯、マカ、紫荷車、鹿茸製剤など)

鹿茸鹿茸海馬海馬
  • 上記の各”期”に用いる漢方薬は、月経の様子・排卵前後のおりものの様子・基礎体温・婦人科特有の症状と全身の体質、などをきちんと判断した上で選択することが大切になります。