不眠症と漢方

不眠とは、自身が満足できる睡眠がとれてい状態のことです。

他の人と比べて睡眠時間が短くても、本人が睡眠に満足していれば不眠ではありませんし、逆に睡眠時間がいくら長くても、本人が睡眠に不満足であれば不眠と考えてよいでしょう。

眠りの具体的な障害には、

  • 寝つきが悪くてなかなか眠れない
  • 睡眠が浅くてすぐに目覚めてしまう
  • 夢ばかりみて寝た気がしない
  • 睡眠時間が短く朝早く目覚めてしまう
  • 終夜一睡もできない

といった様々な状態があります。

治療の説明をするパンダ

五臓のひとつ「心」は火臓であり陽に属し、意識は心神がつかさどっています。

太陽が天にあって陽気が盛んな日中は、心神が活発で清明な意識によって眠ることは少なくなり、太陽が沈んで陰気が活発になる夜間には、安静になった心神によって意識は沈潜し眠りに入ります。

安静になるべき夜間に何らかの原因によって心身が乱されると、不眠が発生するのです。

古人は、
「けだし寐(び:寝ること)は陰にもとづき、神はその主なり、神安んずれば則ち寐ね、心安んぜざれば則ち寐ねず」
と総括しています。

不眠の種類

不眠の種類
急性の不眠 原因が明らかなことが多く、経過はさほど長くありません。
ただし、状態によっては慢性の不眠へと移行することもあります。
慢性・反復性の不眠 多くは原因がはっきりしませんが、からだの内部の状態が失調し心神が不安定になって不眠を生じているので、失調を矯正しなければ安眠は得られません。
内部状態を改善せずに、単に睡眠剤に頼ってもその場しのぎにすぎず、逆に睡眠剤への依存や副作用によって変調がより甚だしくなり、ついには救いがたくなります。
また、精神面への治療だけで肉体面を改善しなければ、十分な治療にはなりません。

漢方薬は、西洋医薬品の入眠剤や安定剤のように確実で速やかな効果ではありませんが、心身の内部状況を次第に改善して、自然で良質な睡眠へと向わせる着実な効果が期待できます。

少し専門的になりますが、漢方でとらえる不眠症は以下のようなタイプに分類されます。

詳しくは、漢方百草園薬局までお問い合わせ下さい。

不眠症のタイプ別漢方療法

タイプ 不眠症の症状ほか 代表的な漢方薬
Aタイプ 寝つきが悪い、夢が多い、眠りが浅い、動悸、倦怠無力、健忘、食欲不振、食後の腹脹、顔色が悪い、めまい・ふらつき、安静を好む、などの症状がよくみられる、
舌質淡、舌苔薄白、脈細弱…
帰脾湯合養心湯、加味帰脾湯、甘麦大棗湯、阿膠・五味子・柏子仁・合歓皮・夜交藤などを加味
Bタイプ 心煩不眠(イライラして寝つけない)、寝つきが悪い、 甚だしければ一睡もできない、動悸、不安感、めまい・ふらつき、耳鳴り、寝汗、口乾、健忘、腰痛、手足のほてり、などの症状がよくみられる、
舌質偏紅、舌苔少、脈細数…
黄連阿膠湯、朱砂安神丸、天王補心丹、交泰丸、六味丸合桂枝加竜骨牡蠣湯
Cタイプ イライラして寝つけない、夢が多い、ため息が多い、驚きやすい、怒りっぽい、よくイライラする、胸脇脹痛、口渇、口苦、小便黄赤、便秘がち、などの症状がよくみられる、
舌質偏紅、舌苔黄、脈弦数…
竜胆瀉肝湯、黄連阿膠湯、柴胡加竜骨牡蠣湯合酸棗仁湯、丹梔逍遥散合酸棗仁湯、茯神・鬱金・香附子などを加味
Dタイプ 心煩不眠(イライラして寝つけない)、夢が多い、よく目が覚める、頭重、口苦、めまい、痰が多い、胸が悶々とする、胸焼け、悪心、げっぷがよく出る、腹脹、などの症状がよくみられる、
舌質偏紅、舌苔黄膩、脈滑数…
温胆湯加黄連山梔子、黄連温胆湯、竹茹温胆湯、加味温胆湯、珍珠母・朱砂・神麹などを加味
Eタイプ 寝つきが悪い、夢が多い、眠りが浅い、びくびくして驚きやすい、驚いて目が覚める、不安感とともに動悸、息切れ、倦怠無力感、小心、臆病、よく思いわずらい悲観的、などの症状がよくみられる、
舌質淡、舌苔薄白、脈弦細…
安神定志丸、酸棗仁湯、加味温胆湯、甘麦大棗湯、桂枝加竜骨牡蠣湯合香砂六君子湯
Fタイプ 普段から食べすぎ、食べすぎて眠れない、腹部脹満、腹痛、悪心、げっぷがよく出る、下痢あるいは便秘気味、倦怠疲労感、などの症状がよくみられる、
舌質偏淡あるいは偏紅、舌苔膩、脈滑弦数…
保和丸、晶三仙、調胃承気湯、半夏朮米湯、麦芽・神麹・莱菔子などを加味

※いくつかのタイプの混合タイプがよくみられます。

酸棗仁湯
温胆湯
天王補心丸
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