漢方医学(中医学)からみたウイルス性肝炎

漢方医学では…

ウイルス性肝炎の大部分は、急性期を経て正常に回復しますが、ウイルスの種類や量、体質の違い、食生活や節制の適否、不注意な治療などにより、慢性肝炎に移行することがあります。

主症状は、黄疸、脇痛、微熱、食欲不振、腹満、疲労感など多岐にわたり、肝機能の障害もみられます。

肝炎とは現代医学の呼び方であり、漢方医学では肝炎という病名はありません。

肝炎は、病因によってウイルス性、アルコール性および薬剤性などに分類されますが、その経過によって急性と慢性にも分けられます。

いずれも、両側の脇が痛むなどの不快感、腹満や食欲減退などの胃腸症状、怒りっぽいという精神情緒の所見が臨床においてよく肝炎にみられるため、漢方医学では「鬱症」や「脇痛」のような病名にあたります。

もし黄疸が出現すると「黄疸」に、肝臓腫大あるいは肝硬変の症状は「癥積」の範疇にそれぞれ属します。

肝炎が慢性化あるいは長期化して正気が虚してきた場合は「虚労」となります。

臨床所見の違いによって…

このように臨床所見の違いによって、治療法を組み立てていくわけです。

少し専門的になりますが、慢性肝炎と肝硬変は以下のようなタイプに分類されます。

詳しくは、漢方百草園薬局までお問い合わせ下さい。

杞菊地黄丸冠脈通塞丸

慢性肝炎・C型肝炎・B型肝炎・肝硬変のタイプ別漢方療法

タイプ 慢性肝炎と肝硬変の症状ほか 代表的な漢方薬
Aタイプ
肝気失疏
脾運少健
脇肋部の脹った痛み、摂食量の減少、腹満、四肢がだるい、疲労倦怠感、時に泥状~水様便(便溏)、などの症状がよくみられる、
舌質淡紅、舌苔薄、脈細弦…
柴胡疏肝散加減、逍遥散合香砂六君子湯
Bタイプ
湿熱化熱
熱擾肝経
脇の脹痛(引きつるように痛む、攣痛)、胸が詰まって苦しい、情緒の変動に伴って増減する、焦燥感(心煩)、不眠、尿が濃い、などの症状がよくみられる、
舌尖紅、舌苔薄黄、脈弦数…
丹梔逍遥散加減
Cタイプ
肝脾両虚
気血不足
胸部の間歇的な鈍痛、顔色が萎黄、頭のふらつき、めまい、動悸、不眠、などの症状がよくみられる、
舌質淡、舌苔薄、脈細数…
帰芍六君煎加減、四物湯合香砂六君子湯、当帰芍薬散合香砂六君子湯、芍薬甘草湯合香砂六君子湯
Dタイプ
腎陰下耗
水不涵木
右脇の灼熱性疼痛、目がかすむ(目糊)、耳鳴り、盗汗、腰脊のだるい痛み、下肢無力、などの症状がよくみられる、
舌花剥あるいは光紅、脈細弦数…
一貫煎加減
杞菊地黄丸
Eタイプ
気滞血瘀
肝脾癥積
両脇部に腫瘤(癥積)を触れ、脹った痛みあるいは刺痛があり、皮膚色が晦暗で、 顔面~頚部~胸部に毛細血管の拡張(紅縷赤痕)がみられ、るい痩、腹満膨隆、などの症状がよくみられる、
舌質紫絳で瘀斑を伴う、脈細渋…
桃紅四物湯加減、桂枝茯苓丸合四物湯合、二陳湯、血府逐瘀湯(血府逐瘀湯=冠脈通塞丸)、冠心逐瘀丹
Fタイプ
脾土衰敗
肝腎虧損
顔色がどす黒い(瘀黒)、皮膚色が暗黄、脇下に腫瘤(癥積)があり固定性で刺痛を伴う、胸腹がつかえて苦しい、るい痩、食欲不振、泥状~水様便(便溏)、元気がない、無力感、などの症状がよくみられる、
舌質淡紫、舌苔少、脈沈遅…
茵蔯附子乾姜湯加減、附子人参湯合五苓散合、杞菊地黄丸加茵陳蒿(附子人参湯=扶陽理中)

冠心逐瘀丹香砂六君子湯