アトピー性皮膚炎の2つのタイプ

アトピー性皮膚炎は、複雑で多種多様な症状を発症します。

しかし、症状の特徴や年齢などによって大きく分類すると、

という2つのタイプに分けられます。

アトピー性皮膚炎の2つのタイプ

アトピー性皮膚炎にかかりやすい乳児

乳児の中でも消化吸収力や栄養の代謝機能が生まれつき弱いと、身体の防衛機能と血液のバランスが悪い状態になっており、身体の中に不要な水分や熱が生まれやすくなっています。

乳児の身体がこのような状態の時に、外から侵入した病因である風に不要な水分や熱が結びき、それが原因となって乳児のアトピー性皮膚炎が起ります。

比較的治しやすい乳児のアトピー性皮膚炎

乳児のアトピー性皮膚炎の症状として、耳のまわりがただれる「旋耳瘡(せんじそう)」や、頬や頭に丘疹ができたり頭や顔や首に症状が現われるという特徴があります。

これは、風が身体の上部や表面を侵す性質を持っているからです。

アトピー性皮膚炎は痒みが非常に強いため、どうしても頻繁に強く掻いてしまい、掻き続けていると黄色い液が流れたり、また血が滲んだりただれたり、ミカン色をした脂っこいかさぶたができたりします。

また、病因である風の症状が軽いときは熱の症状は軽くなり、このような場合は主に不要な水分による症状となります。

不要な水分による症状の特徴は、両肘や両膝の裏側に白い丘疹ができる「四弯風(しわんふう)」などがあり、痒みは少なく、ただれることもなく、発症部位もあまり移動しませんが、掻いたあとには白い線が残ります。

胃腸を補えば完治する乳児のアトピー性皮膚炎

乳児のアトピー性皮膚炎

乳児がアトピー性皮膚炎を発症する根本的な原因は、胃腸が弱いということです。

ですから、乳児のアトピー性皮膚炎治療としては、胃腸を補って栄養の代謝を活発にして熱や不要な水分が生まれないようにすることが原則となります。

また乳児の場合、ごく初期であれば病因を取り除かなくても、身体の基本的な働きを補う治療をするだけで治ってしまうことがよくあります。

例えば、生後6ヶ月くらいまでならば、「補中益気湯」や「黄耆建中湯」だけで治ることもあります。

他の病因と結びつきやすい「風」

病因のひとつ風は、他の病因と結びつきやすいというやっかいな性質をもっています。

乳児は、健常であってももともと胃腸の働きが虚弱で、不要な水分が生まれることが多く、この不要な水分と結びつきやすいのが風なのです。

風が不要な水分と結びつくと白い水疱ができ、時には丘疹が現われることもあり、掻くと水が出ます。

このような場合は「補中益気湯」に、不要な水分を取り除く「五苓散」や「猪苓湯」、「防已黄耆湯」を併用するとよいでしょう。

これらの漢方薬は胃腸を根本から治しますので、いったんアトピー性皮膚炎の症状が治まれば、再発することはまずありません。

成人のアトピー性皮膚炎

成人のアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎が乳児期の間に治らないまま幼児期(3、4歳)になると、長い間皮膚を掻いてきたことに加えては、ステロイドホルモンの使用ややむなしのバランスの悪い食生活などによって「二次性皮膚傷害」などが加わってきます。

そして、年齢とともに熱の力が強くなるため、次第に症状が複雑になってきます。

実は、既にこのころから成人のアトピー性皮膚炎は始まっているのです。

風と熱が結びき丘疹が熱のために赤くなりますが、このような場合は、「補中益気湯」に、風や熱を取り除く「升麻葛根湯」を加えたり、「治頭瘡一方」を用いるとよいでしょう。

また、熱の症状よりも不要な水分による症状が強いときは、「越婢加朮湯」や「防已黄耆湯」、あるいは「麻杏?甘湯」が適しています。

さらに、皮膚がただれて黄色い液が滲み出ているときには、「消風散」に「四君子湯」あるいは「補中益気湯」を合わせたものを使用します。

そして、掻いた後で出血する場合には、「治頭瘡一方」などを使うとよいでしょう。

「水の通り道」を「熱を帯びた不要な水分」が妨げる場合

全身を巡っている「水の通り道」を通って、熱を帯びた身体に不要な水分が全身に広がります。

このような場合は、身体に必要な水分の流れなどが妨げられるため、 頭が重かったり胸がつかえたり、泥状便や腹満感、尿の異常といった症状が現われますので、「水の通り道」の状態を知ることも、アトピー性皮膚炎では非常に大切です。

したがって、アトピー性皮膚炎の治療は、不要な水分を取り除くことを目標とし、「柴胡桂枝乾姜湯」や「木防已湯」に「よく苡仁エキス」を加えたものが使われます。

よく苡仁を加えることで不要な水分を取り除く力がさらに強まるからです。

このようにアトピー性皮膚炎の治療では、まず熱を取り除くことによって急性症状を抑え、その後に「補中益気湯」や「六君子湯」あるいは「啓脾湯」などで根本的な治療を行います。

成人になると、ますます複雑になるアトピー性皮膚炎

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アトピー性皮膚炎は、成人になるころには、熱を帯びた不要な水分の力が強くなり、身体の最も奥深い場所に入り込んでしまいます。

このような症状が強い場合には、「竜胆瀉肝湯」や「五淋散」、「消風散」などで強い症状をおさえます。

その後、血を補い風を除く「当帰飲子」や、水液を補いながら不要な水分を取り除く「六味丸」を用いる必要があります。