酒は百薬の長というけれど…お酒との上手なつき合い方

かの吉田兼好は、「徒然草」のなかでこう記しています。

『百薬の長とはいえど、万の病は酒よりこそ起これ』

お酒が、「百薬の長」となるか、「百毒の長」となるかは、いうまでもなく飲み方次第。

愛飲家の皆さん、お酒とイイ関係でつき合ってますか?

心得その一 「ほどほどに」と心すべし

お酒と健康の関わりについては、アメリカで興味深いデータが報告されています。

飲酒量と死亡率の関係を調査し、グラフにしてみると、「J」字型のカーブを描いたのです。

Jカーブ効果

つまり、まったくお酒を飲まない人より、少し飲む人のほうが死亡率が低く、しかし適量を越えると、量に比例して死亡率がぐんと高くなるという調査結果でした(Jカーブ効果)。

もちろんこれは、飲まない人に飲酒を勧める目的ではなく、過飲者向けとして、適量のお酒を飲んだ場合の効用」を証明したものです。

具体的には、適度の飲酒によって、

といわれ、心筋梗塞や狭心症の予防につながるとされています。

また、

などの効果は、皆さんもご存じのことでしょう。

要するにお酒は、適量をわきまえてこそ、「百薬の長」となるのです。

しかし、量が過ぎたり、また毎日飲み続けていると、今度は一変して、「百毒の長」の牙をむくやもしれません。

直接影響が及ぶ肝臓の障害(脂肪肝、肝硬変など)はもとより、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病の一因となったり、アルコール依存症を招くなど、さまざまな病気を引き起こす危険性をはらんでいるのです。

お酒は飲む量や飲み方次第ということを、愛飲家の方はくれぐれも忘れないようにしてください。

では、その適量とは、どのくらいの量をいうのでしょうか。

わかりやすい基準として、「お酒の単位」をご紹介しましょう。

1単位はアルコール約20g分を指し、体重60㎏の男性が、肝臓で分解するのに3時間かかる量です。

お酒に換算した量は、図に示したとおりです。

お酒に換算した適量お酒には、強い弱いの個人差や、性差があります。適量は目安として考えてください。

夜飲んだアルコールを翌日までもち越さず、肝臓を休める時間も考慮すると、1日の適量はこの1単位分と考えてください。

仮にお酒が進んでも、2単位分までには収めるようにしましょう。

また、週に2日は休肝日として、お酒を飲まない日を作ることも大切です。

好きなお酒でも、そのせいで身体に悪影響が及んでは、元も子もありません。

「酒は飲んでも飲まれるな」というように、節度をもって、適切な量を楽しみたいものです。

心得その二「身を案じて」飲むべし

適量を守るのと同様、お酒の飲み方にも気を配りましょう。

体内に入ったアルコールは肝臓に運ばれて処理されますが、その処理能力は1時間に約7㎎といわれています。

その限界を越えるような飲み方をすれば、アルコールの血中濃度が高いレベルになって、身体に悪影響を及ぼし、また二日酔いの原因ともなります。

さらに「酔い」の程度も、適度な「ほろ酔い」の段階を越え、思わぬ事故につながったり、周囲に迷惑をかけるような事態にもなりかねません。

ズバリお酒とイイ関係を保つには、「ゆっくり、楽しく、自分のペースで」がポイントです。

そのための『10の提案』を以下に示しました。

上手な飲み方は、身体に優しいだけでなく、お酒のマナーにもつながります。そのこともぜひ覚えておきましょう。

お酒と上手につき合うための10か条

1人で飲むと、飲み方も速くなる。家族や友人とともに、語り合ったり笑ったり、お酒の味とその場の雰囲気を楽しもう。
お酒を楽しく飲める量とペースは、人によってさまざま。他人の楽しいお酒を邪魔するのは、愛飲家としてマナー違反と心得よう。
人それぞれに、お酒を楽しめるペースがある。無理して人に合わせようとしない。一気飲みなどはもっての外。
強いお酒は、のどや胃腸の粘膜に強烈な刺激となり、また酔いもまわりやすい。水で薄めて飲もう。
空腹状態でのお酒は身体に毒。たんぱく質やビタミンの豊富な食べ物をいっしょに摂ると、胃の粘膜を守ってくれる。食べすぎには注意。
2単位のお酒は、肝臓での分解に6時間かかる。翌日までアルコールを残さないためにも、深酒は慎もう。
自分の適量を知り、それを守ること。他人に迷惑をかけないためにも、ほろ酔い気分でとどめる。
薬の作用がうすれたり、逆に強く表われたりすることがある。とくに鎮痛剤、風邪薬、糖尿病の薬などを飲んでいる場合は、お酒を飲まない。
お酒を飲んだ後は、寝ている間も肝臓は酷使されている。定期的に休ませ、肝臓をいたわることが、肝臓病予防につながる。
肝臓は別名「沈黙の臓器」。日頃、お酒を飲んで酷使している人は、定期的に健康チェックしよう。症状がでてからでは遅いこともある。



※飲酒運転は重大な犯罪です。お酒を飲んだ時は、どんな理由があっても、絶対に運転してはいけません。『飲んだら乗るな。乗るなら飲むな』

出典:うちの薬箱