タバコがやめられないあなたへ
あるデータによると、タバコを吸う人の半数が禁煙を試みたことがあり、約70% の人が「やめたい」「減らしたい」と考えているそうです。
それでもタバコがやめられないのは、あなたの意志の弱さが原因ではなく、実はニコチン依存症という病気によって、タバコから離れられなくなっているからなのです。
そんなあなたの強い味方が禁煙外来。医師のサポートによって、なるべく苦しまずに禁煙を成功に導こうという診療科です。
禁煙を決意する タバコの害を再認識!
タバコの煙には、約200種類の有害物質が含まれており、そのなかには30~40種もの発がん物質があるといわれます。
とくに悪影響を及ぼすのがニコチン、タール、一酸化炭素の3大有害物質で、が を始め、全身のさまざまな疾患の引き金となります(図1参照)。
事実、タバコを吸わない人に比べ、喫煙者の全がん死亡率は1.7倍にものぼります。
とくに影響が顕著なのは、喉頭がんの32.5 倍、肺がんの4.5倍、食道がんの2.2倍などで、タバコの煙が通過する時に、どれほどの害をまき散らしているかがわかります。
がん以外にも、喫煙は、動脈硬化を促進させる大きな要因といわれています。
その結果、心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる重大な 病気を引き起こす危険性が非常に高まっていきます。
また、別名「タバコ病」ともよばれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は、進行すれば呼吸困難から呼吸不全を起こす、恐ろしい病気です。
さらにタバコは、その煙を吸わされる(受動喫煙)周囲の人にまで健康被害を及ぼします。
例えば、ある調査結果によると、夫が1日20本以上喫煙する妻は、そうでない場合に比べ、肺がんの死亡率が約1・9倍にまではねあがるそうです。
また、家族が喫煙する子どもは、肺炎や気管支炎を発症しやすくなるというデータもあります。
それでもまだあなたは、タバコを吸い続けますか?
動機づけ メリットを考える
どんなに長い間吸っていても、また何歳からでも、禁煙に遅すぎるということはありません。
始めた時点から、図2のように、刻々と身体の状態が改善されていくことを実感できます。
さらに図1 の病気のリスクも、禁煙を継続することで、着実に減っていきます。
その他、タバコ代が節約できる、部屋が汚れずにすむ、家族の健康 を守れるなど、禁煙のメリットを強く考えるようにすると、あなたの決意はより固くなり、成功への近道となるでしょう。
医師のサポートを受ける 禁煙外来を利用する
禁煙を成功させる決め手は、きっぱりと断煙してしまうことです。
徐々に本数を減らしていくよりも、成功の確率はグンと高くなります。
しかしこの方法には、大きな壁が待ち受けています。
それはニコチンの離脱(禁断)症状です。
無性に吸いたくなる、イライラする、集中力が欠けるなど、そのつらさに禁煙を断 念した人も多いことでしょう。
でも、あきらめは禁物。
そんな離脱症状を軽減し、あなたの禁煙を強 力にサポートしてくれるのが禁煙外来です。
以下のような条件を満たせば、健康保険が適用され、専門的な治療・指導を受けることができます。
- ただちに禁煙する意志がある
- ニコチン依存に関するテストの結果、ニコチン依存症と診断される
- ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上である
- 禁煙治療を受けることを文書で同意する
保険適用の禁煙治療は、12週間に5回の診察を受け、禁煙補助薬の処方と、個人に応じた行動療法のアドバイスが中心となります(図3参照)。
禁煙補助薬の1 つ、ニコチンパッ チは、1日1枚皮膚に貼って、ニコ チンを体内に吸収させ、離脱症状を和らげるものです。
徐々にパッチを小さくしてニコチンの量を減らし、ニコチン依存を解消していきます。
もう1つは、ニコチンの働きを遮断する内服薬、バレニクリンです。
この薬を飲むと、タバコを吸ってもおいしいと感じられなくなり、喫煙欲求が低下します。
どちらの薬を使うかは、医師とよく相談のうえで、決定してください。
またタバコは、目覚めや食後の一服など、生活習慣化している側面があり、それがないと口寂しく感じる心理的な依存も、やめにくい原因となっています。
対策としては、行動パターンを変えたり、別の行為で気を紛らわす行動療法が有効ですが、その具体的なアドバイスを受けることもできます。
図4はその一例です。
そしてもう1つの決め手は、失敗してもくじけずに、何度でもトライすること。
禁煙の意志さえ失わなければ、その先にはきっと、タバコのない健康的な生活が待っています。
タバコが吸いたくなったら…
- 冷たい水や氷、熱いお茶を飲む
- 歯みがきをしたり、ガムや酢コンブを食べて、口寂しさを解消する
- 体操をして身体を動かす
- 深呼吸や音楽を聴くなどリラックス法を行なう
- 酒席には当分参加しない
- 味の濃いものや脂っこい食べものを避け、 野菜を多く食べる
- もう1 日頑張ってみようと、楽な気持ちで構え、プレツシャーを和らげるようにする
出典:うちの薬箱