2000年以上の歴史の中で医学としての治療体系が確立

中医学は中国古代の素朴な自然弁証思想によって発展してきました。

陰陽学説・五行学説・精気学説という3つの古代思想が中医学理論の柱になっています。

そして2000年以上の歴史の中で、多くの中医師(中医学専門の医師)の経験によって中医学独自の生理・ 病因(病気の原因)・病態・診断・治療方法が形成されてきました。

現在の中医学の治療体系は以下の通りで、病因によって病態になった人間を中医学独特の四診(望診、聞診、問診、切診) という方法で診断し、弁証という方法で「証」を決めて、「証」に従って処方を決定します。

基本的な考え方や病態の捉え方は、西洋医学とは異なりますが、治療の流れは西洋医学とほぼ同じで、医学としての完成度は高いと言えます。

中医学理論

人間と自然界をまとめて一つの整体と考えています

古代の中国人は、自然界のあらゆる現象を観察して、人間でも同じような変化が起きていると考えました。

俗に、「自然界は、大宇宙、人間は小宇宙」「人と天地は相応ず」などと言われる理由もここにあります。

例えば、自然界で風が吹けば木の葉がゆれる現象を見て、 人間の中でも風(ふう)が吹けばめまいやふらつきが起こると考えました。

このような考え方を”天人合一”と呼んでいます。

また、季節や地域の違いによって人間に異なる変化が現れることを観察して、 季節や地域による生活や食の養生法や漢方処方の変化も考えられてきました。

このような考え方は西洋医学には無い中医学独自の特徴です。

病名による治療ではなく、「証」に従って治療します

中医学では、疾病によって人間に現れた症状や顔色・排泄物・舌・脈などの変化を、 四診を使って分析した上で「証」を決定します。

「証」とは、疾病の過程である時期(診断時)の病態を指しています。

東洋医学では、同一の病気(同じ病名)であっても、初期・中期・後期・末期などの時期によっては「証」が異なるため、 当然使用する漢方薬も変わってくるというわけです。

これを”同病異治”と呼んでいます。

また、異なる病気でも同じような症状や顔色・排泄物・舌・脈などを現すことがあり、 このような場合には異なる病気でも同じ漢方薬を用いることになります。

これを”異病同治”と呼んでいます。病名ではなく、「証」に従って治療するという原則は中医学の大きな特徴の一つです。

西洋医学における病名や検査成績を参考に治療します

中医学と西洋医学は、その歴史や各々の病気における病態の捉え方など大きく異なりますが、 病気の治療においてお互いの良いところを取り入れることはできます。

中国では中西医結合といって、 両医学の良いところを組み合わせて治療する方法が取り入れられており、中医病院でも西洋医学の検査が行なわれ、 西洋病院でも中医科があります。

当店でも相談を受ける際には、中医学による診断や弁証に基づきながらも、 西洋医学の病名や検査値を参考にして漢方処方を決定することがよくあります。

予防医学が発達しています。→”未病先防”

中医学には「未病を治す(未病先防)」という考え方があります。

未病とはいわゆる半健康人に似ています。

未だ病気にならずということで、病院で検査をしてもどこにも異常がないのに、 何となく体がだるい・めまいがする・やる気が出ない・イライラする・ぐっすり眠れない・頭が重い・手足がしびれる等の症状 (一般に不定愁訴といいます。)がみられる方は多くおられます。

中医学ではこのような時(未病の状態)にでも、症状や顔色・舌・脈等から体のひずみを捉えて、 未病から病気に発展しないように予防することが得意なのです。