ある日突然起こる、激しい痛み

五十肩はこうしてのりきろう!―夏こそご用心編―

「あの棚の上の荷物を…」と、無理に手を伸ばした途端、肩に激痛が走リ、腕が上がらなくなる――五十肩はその名のとおり、おもに50歳前後の人に多い肩の病気で、四十肩とよばれることもあります。

最近は夏に発症する傾向が強いといわれ、この時季はとくに、予防と対策に充分な気配りが必要です。

五十肩ってどんな病気?

五十肩は、医学的には肩関節周囲炎といいます。

それまでは何の異常もなかった肩が、例えば高いところの物を取ろうとしたり、無理な姿勢でひねったりした時に、激しい痛みを起こし、それとともに動かせなくなってしまう、肩関節の病気です。

五十肩の克服方法

痛みは、肩を動かした時はもちろん、安静にしていても激しく感じることがあり、夜眠れないほどの人もいるくらいです。

一般には、肩の後ろ側が、ズキズキと痛みます。

また、その痛みのため、肩を動かせる範囲が極端にせばまってしまうのも、五十肩の特徴です。

下におろした腕が上がらなくなったり、手を後ろに回すこともできなくなります。

さらに、痛いからといってそのまま放置すると、肩が動かないままの状態になり、日常生活に大きな支障をきたすことになるのです。

五十肩の原因は?

五十肩は、おもに老化や、肩の使いすぎによって、肩関節の周辺組織に炎症が起こり、それが原因で発症すると考えられています。

とくに炎症が発生しやすいのは、腱板関節包、滑液包です(図1)。

肩関節の周辺組織

腱板は、骨と筋肉を結びつけている組織で、腕を上げ下げするたびに 骨の間にはさまれ、大きな負担がかかる部位です。

この腱板が、老化などによって弾力性が低下すると、繰り返し傷つき、やがて炎症が起こることになるのです。

さらに炎症は、肩関節をすっぽり包んでいる関節包や滑液包へと広がります。

これらは、肩関節をスムー ズに動かす潤滑油の役目をしたり、衝撃を和らげるクッションの働きをしているため、炎症が及ぶと肩が動かしづらくなる(運動制限)のです。

五十肩は、なぜ夏に起こりやすいの?

五十肩の発症には、肩の冷えも深く関係しています。

夏に発症する人が多いのは、実は冷房による冷えが、大きな要因となっているからです。

夏は薄着になるために、エアコンの風が直接あたるなどして、肩を冷やしがちです。

その冷えによって、肩関節周辺の血管や筋肉が収縮し、血流が悪くなって、肩のスムーズな動きを妨げてしまいます。

その状態で、無理に肩を動かしたりすると、肩に炎症が起こりやすく、五十肩を発症することになるのです。

治療中の方はもちろん、予防や再発防止のためには、次のような工夫で肩の冷えを防ぐことが大切です。

  • カーディガンやストールを羽織って、冷風を直接肩にあてない。
  • 入浴時は湯船につかるか、シャワーをあてるなどして、肩を温める。
  • 就寝中の冷房は、タイマー機能を使い、冷えすぎを防ぐ。

五十肩の治療法は?

「五十肩は自然に治る」と考えている方もいるようですが、放置しておくと、痛みは和らいでも、肩が元どおりに動かなくなることがあります。

また、他の病気との鑑別も必要です。そうした意味からも、医師の専門的な診断や指導は欠かすことができません。

肩の痛みが起こったら、早めに整形外科を受診しましょう。

五十肩を発症してから完治するまでの経過には、下記のような3段階があり、それぞれに応じて対処法も異なってきます。

とくに重要となるのは、痛みがひいてからの運動療法です。

医師とよく相談しながら、決して無理をせず、一つひとつの動作をゆっくりと、毎日根気よく続けることが大切です。

五十肩がたどる経過と対処法

  1. 急性期 約2週間
    • 激しい痛みを感じるので、なるべく肩を動かさず、冷湿布などで冷やす。
    • 痛みを和らげるために、消炎鎮痛剤(飲み薬や塗り薬など)が処方されたり、局所麻酔薬などを肩に注射することもある。
  2. 慢性期 約2~4か月
    • 肩を動かさなければ痛まなくなるが、この時期から運動制限が進行し始める。
    • できるだけ肩を温めるようにし、痛まない範囲で、少しずつ動かすようにする。
      無理をするとかえって肩を痛める。
  3. 回復期 約3~6か月
    • 痛みはなくなるが、そのまま放置すると、肩の関節が硬くなり、運動制限が進む。
    • 運動療法で積極的に肩を動かし、リハビリに取り組む。肩の保温にも努めよう。
      時間はかかるが、継続することが重要。

五十肩を改善する運動の例

※説明の便宜上、右肩が痛むケースとし、イラスト中にはで示します。

運動は医師とよく相談して行ないましょう。

◆腕を振る運動

机などに左腕をついて前かがみになり、右手でアイロンを持って、①ゆっくり前後に振る。

同じ要領で、②左右にも振る。慣れてきたら、徐々に回数を増やす。

◆壁づたい運動

壁の横に立つ。身体は動かさず、右手の人差し指と中指を壁にはわせるようにして、少しずつ腕を上げていく。

同様に、壁を正面にして行なう方法もある。

◆腕を広げる運動

両腕を身体のわきにつけ、ひじを前に直角に曲げる。その姿勢から、両腕を外側へ少しずつ開いていく。

◆腕を上下させる運動

両腕をできるだけ肩の高さに上げ、ひじを曲げて、上下させる。

仰向けに寝た姿勢で行なってもよい。

◆タオルを使った運動

タオルを背中に回して、左手に力を入れて上下させる。

右手はタオルに添える程度で、力は入れない。

出典:うちの薬箱