漢方医学(中医学)が西洋医学を補完

西洋医学中心の現在の医療体系では、生活習慣病に対しては、まだまだ対応しきれていません。

生活習慣病には特効薬が無いため、治療よりも予防が大切だということは共通認識であることは事実ですから、漢方医学(中医学)の中医学的病因理論とその治療並びに豊富な予防対策は、西洋医学を補完でき大いに活用できるものと考えられます。

すべての疾患に点検

例えば、中医学では病因弁証および対因治療(本治)を重視しています。

日常生活中の起居・飲食・嗜好などの生活習慣と病因病理および現われてきた病態との関連を、いつも入念な問診を通じて追究し、診療の根拠または参考としていることです。

これは今言われている生活習慣病に対しては勿論なことですが、良くない生活習慣との関連があるかどうか、またすべての疾患に対しても点検を行っているということです。

冷え症と花粉症

冷え症と花粉症の中医学的病因認識はその好例です。

この両者は一般的に生活習慣病として取り扱われていませんが、中医学から考察すれば、それぞれの発病または増悪は、いずれも良くない生活習慣と関わっている側面を持っていると考えられます。

冷え性のパンダ

冷え症は、冷飲冷食の過剰摂取、冷房病など人工環境の過多使用、運動不足、無理なダイエット、歪んだ美意識(下半身の薄着の傾向、臍を出すようなファッションのモード)などの健康的ではない生活様式ならびに生活習慣との関連が注目されます。
イラスト(花粉症のパンダ)

花粉症のパンダ

花粉症の病因については、室内外の環境汚染、ストレスの過多、冷飲冷食の過剰摂取、人工環境、運動不足などの生活様式ならびに生活習慣との関連も注目されるものです。

「過用」による病因説

また、中医学の原典である『内経』中の「過用」による病因説も、生活習慣病を認識する場合に大いに参考にできます。

中医学的には1"

『内経・素問』経脈別論には、「春夏秋冬、四時陰陽、生病起于過用、此為常也」。

これに対する高士宗氏は、「過用、即飽甚、奪精、遠行、恐惧、労苦也」と注解しています。

つまり、食べ過ぎ、飲み過ぎ、体力を消耗し過ぎ、恐怖などのストレスの過剰、心身の過労などは、一般的に多くみられる病因だということです。

『内経』には、また「未病」理論を提出し、健康の中にあるいは半健康状態あるいは軽症の段階から、日常生活中に早期治療と予防を重視し、未然に防ぐという「一次的予防」と「二次的予防」を共に重視する姿勢を強調しています。

中医学的には2

さらに、2000年以来の臨床実践において、日常の食養・薬膳における薬食同源の理念、治療と予防において一貫的に体調と体質の改善を共に重視する特徴、季節や年齢および性別などに応じる養生学の理論と対策、経口投与の薬による内治法と針灸などの体表から治療を施す多彩な外治法の治療と予防の体系、心身両面の調整を通じて予防・治療とリハビリに活用されてきた気功などの様々な中医学的健康術は、現在の生活習慣病の克服に対して、多くのヒントと有力な武器を提供していると思われます。

冠心逐瘀丹 ( かんしんちくおたん )