免疫とアレルギーは、コインの表と裏の関係
アレルギーは、ギリシャ語由来
私たちの日常生活で最も多くの人が体験するアレルギーは「食物アレルギー」でしょう。
魚やカキ、えびやカニ、レバーなどを食べると蕁麻疹が出たり、ひどいと嘔吐したり、何らかの特定の食材に限って体が受けつけないという人が必ず身近に一人や二人いると思います。
作家の三島由紀夫はカニアレルギーで、食べるだけではなく蟹(カニ)という文字を見ただけでも駄目だったとのことで、また、ドイツの文豪ゲーテは玉ネギが全く駄目だったとのことです。
それにしても、なぜ特定の食材を食べるとアレルギー症状がでるのでしょうか。
また、そもそもアレルギーとはどういった症状があり、どのようなメカニズムで起こるものなのでしょうか。
アレルギーという言葉は、もともとギリシャ語に由来し、「変わった」という意味を表す「アロス」と、「反応」という意味を表す「エルゴ」という言葉を組み合わせてつくられた言葉とされています。
アレルギーは「変わった反応」ということで、1906年にオーストリアのホン・ピルケという小児科医が最初に提唱しました。
ピルケがジフテリアの患者に馬の血清を注射したところ、1回目はなんでもなかったのですが、2回目に患者に馬の血清を注射すると発熱や蕁麻疹などの症状が現れました。
彼は、その後さらに綿密な観察した結果、この現象を次のように説明しました。
彼は、このような反応を表わすものとして「アレルギー」という言葉を提唱したのです。
抗体の種類と体への影響
では、ピルケの言葉をもう少し具体的に説明してみましょう。
私たちの体には、自分と自分以外のものとを判別する能力が生まれつき備わっています。
自分のものではない物質を仮にAとすると、Aがいったん体の中に入るとそれに反応する物質(B)が作られます。
そして二度目にAが入ってきた時には、BがAに対して即座に反応する仕組みができています。
例えば、ウィルスや細菌などの病原体が体内に入ってくると、それに抵抗する物質が作られ、再び同じ病原体が入ってきた時には、その物質が病原体から体を守るように作用します。
このような体の反応を「免疫」と呼び、病原菌を総称して「抗原」、体内にできる物質を「抗体」と呼んでいます。
予防接種は、こうした免疫の作用を利用して病気を予防しようというものです。
しかし、抗原に対する抗体の反応(抗原抗体反応)が、て全て体にとっプラスに作用するのかというと、残念ながらそうではありません。
抗体の種類によっては、体に悪い影響を与える場合も多くあります。
これが正にアレルギー反応で、アレルギー反応の結果として引き起こされる病気をアレルギー疾患と呼んでいます。
言い換えると、免疫とアレルギーはコインの裏表のような関係で、抗原抗体反応が体にプラスに作用する時が免疫となり、マイナスに作用する時がアレルギーとなると言えます。