防衛機能と血液が皮膚の健康が保つ

皮膚を健康な状態に保つ機能を「衛気(えき)」といいます。

衛気によって汗腺の開閉を調節したり、皮膚の張り具合を適度な状態に保ち体温を維持したり、皮脂腺から皮脂を分泌して皮膚に潤いを与えたりして、総合的に身体の表面を守っています。

この総合的に身体の表面を守る機能がスムーズに働くためには、「営気(えいき)」と「営血(えけつ)」という物質が必須で、体液とその一部分である血液の中を流れています。

健康な胃腸

営気と営血は、どちらも飲食物が消化・吸収されてできた非常に細かい栄養物資からつくられますので、営(えい)と衛(え)が調和していることが皮膚の健康に保つための条件となります。

そして、営と衛が調和するためには、まず胃腸が健康で栄養の代謝が活発でなければならないのです。

営と衛の不調和により生まれる熱と不要な水分

しかし特に現代では、外部からの病因や強すぎる精神への刺激、暴飲暴食やバランスの悪い食事、そして過労などのによって営と衛の調和が乱れると、皮膚の病気が起こりやすくなります。

アトピー性皮膚炎では、必ずこのような「営衛失調」が大きな原因として存在しています。

多くのアトピー性皮膚炎の患者さんは、消化吸収能力や栄養代謝のいずれかか両方が生まれつき弱いことで営衛失調になりやすい傾向があります。

このような営衛失調が皮膚の血液の流れを乱し、防衛機能の働きが悪くなり「熱」が発生します。

この熱が紅疹を引き起こし、体液の巡りを悪くし、不要な水分である「湿」が発生することによって白疹や水疱を発現させる原因となります。

身体の内外の病因が結びついて起こるアトピー性皮膚炎

身体がこのような営衛失調の状態の時に、「風(ふう)」が外から侵入すると、熱や不要な水分(湿)と結びつきます。

「風」は、温かく、活発に動きまわって変化しやすく、からだの表面や上部から侵入しやすい性質の病因です。

初期のアトピー性皮膚炎は、主に「風」と「湿」や「熱」が結びついたものが病因となって起こります。

病気が長引くと、からだに必要な機能や、血液や水液といった栄養物質が失われたり、流れが悪くなります。

アトピー性皮膚炎の発症のメカニズム

中医学(漢方医学)では、機能や物質が流れなくなると、その部分が痛むと考えます。

痒くなるのは、痛む場合より病気の反応が軽いことを表しています。

アトピー性皮膚炎の激しい痒みは、栄養物質や機能の流れが非常に悪いことを表しているのです。

このようにして、栄養物質の消耗が進むと、症状がさらに複雑なものに変化していきます。

これを内臓の面から見ると、胃腸から肝臓や腎臓など、からだのより深い方へと病気が進むということになります。

それでは、アトピー性皮膚炎にはどのようなタイプがあり、どのような治療が行われるのか、次項から具体的に考えてみましょう。