中医学(漢方医学)では、先天稟賦不足(先天的な虚弱体質)・慢性的な疲労や睡眠不足・持続的なストレス・ 過剰な性交渉・飲酒過度、などによって腎精異常(性ホルモン異常)となり、男性不妊を引き起こすと考えています。
ここでは6つのタイプの精液異常に対する漢方治療を紹介します。
(少し専門用語が混じりますが、ご了承下さい。)
精液不液化症
射精後、1時間以内に液化あるいは部分液化しない場合、精子の運動に悪影響が及び、男性不妊を引き起こすことがあります。
中医学では、陰虚火旺型(のぼせ型タイプ)と陽虚凝滞型(冷え性タイプ)に分けられますが、前者の方が多くみられます。
精液不液化・ほてり・寝汗・口乾・便秘などを伴う陰虚火旺型の方には、 知柏地黄丸・イーパオ(蟻製剤)・麦味地黄丸・冠元顆粒・血府逐?湯などを体質に合わせて用います。
精液不液化・寒がり・冷え性・腰膝無力などを伴う陽虚凝滞型の方には、参馬補腎丸・冠元顆粒・参茸補血丸・海馬補腎丸・至宝三鞭丸・血府逐瘀湯などを体質に合わせて用います。
精液減少症
精液量または精子数が不足することが原因の不妊症で、1回の精液量が2ml以下、精子数が500~2000万/mlを言います。
中医学では精冷症と呼んでおり、腎陽不足・命門火衰による精室の温煦不能が原因と考えています。
寒がり・四肢の冷え・小便清長・陽痿・早漏・性欲低下などを伴うことが多く、参馬補腎丸・鹿茸大補湯・海精宝・参茸補血丸・至宝三鞭丸・海馬補腎丸・五子衍宗丸などを体質に合わせて用います。
精子無力症
精子の活動力が低下することで、前進運動精子が50%以下または高速直進精子が25%以下を言います。
中医学では腎陽虚に属し、ストレスや思慮過度・過剰な性交渉・飲酒過度などによって引き起こされると考えています。
寒がり・腰膝酸軟・四肢冷え性・性欲低下などを伴うことが多く、参馬補腎丸・鹿茸大補湯・海精宝・参茸補血丸・ 至宝三鞭丸・海馬補腎丸・五子衍宗丸などを体質に合わせて用います。
奇形精子症
形態正常精子が30%以下を言います。
中医学では肝腎不足に属し、過剰な性交渉・飲酒過度などによって腎精を生成できなくなり、精子異常を引き起こすと考えられています。
ほてり・寝汗・腰膝酸軟・めまい・耳鳴りなどを伴うことが多く、杞菊地黄丸・海精宝・麦味地黄丸・知柏地黄丸・五子衍宗丸などを体質に合わせて用います。
膿精液(精液感染)症
精液の白血球数が100万個/ml以上で、前立腺液にクラミジアまたはマイコプラズマ陽性がしばしばみられます。
泌尿生殖器炎症疾患や前立腺炎・睾丸炎・副睾丸炎・精嚢炎などと関連性があります。
中医学では、不潔性交渉・不潔飲食・過食肥甘厚味・湿熱内生・流注下焦などによって発症すると考えています。
陰部墜脹感・排尿痛・排尿不利などを伴うことが多く、竜胆瀉肝湯・五行草茶・知柏地黄丸・白花蛇舌草などを体質に合わせて用います。
抗精子抗体(免疫学的不妊)症
精液や血液検査で、抗精子抗体陽性がみられます。
原因は不明で、輸精管障害や前立腺炎・睾丸炎・副睾丸炎・精嚢炎などと関連性があると考えられています。
熱がり・のぼせ・排尿痛・尿色黄赤などを伴うこともありますが、特に何も無い場合もあり、竜胆瀉肝湯・ 五行草茶・知柏地黄丸・白花蛇舌草・玉屏風散などを体質に合わせて用います。
男性不妊に対する生活上の養生
男性不妊に対しましては、上記の通り漢方薬が効果的な場合が多いのですが、下記の養生と合わせて取り組んでいただくことによってさらに効果が高まりますので、是非心に留めておいて下さい。