- 笑顔でハツラツ!- 笑いの健康学
『進化論』で有名なダーウィンは、「人が笑うのは生まれながらの能カだ」という言葉を残しています。
確かに「笑い」は、気分を爽快にし、また人間関係を円滑にしてくれます。
しかし笑いの効果は、それだけではありません。
最近の研究によって、健康面でも素晴らしい作用をすることがわかり始めてきたのです。
笑いで病気を治した男
1964年、アメリカのノーマ・カズンズ氏は、膠原病の激しい痛みに、もがき苦しんでいました。
体質的に鎮痛剤も受けつけず、為す術のない状況のなかで彼が試みたのは、「笑い」による痛みの解消でした。
コメディーの映画 や本などで10分ほど大笑いをしたあとは、2時間ほど安眠できることがわかり、また血液検査でも、炎症の度合いが低下していることが確認されたのです。
この『笑い療法』によって、500人に1人しか全快しないといわれる難病を克服し、彼が職場復帰したのは、わずか半年後のことでした。
後にその闘病記が発表され、世界的に注目を集め、笑いの能の科学的根拠について、盛んに研究が行なわれるようになったのです。
笑えば免疫カがアップ!
日本では1992年に、がんや心臓病の患者に、喜劇の舞台を楽しんでもらい、大笑いした前と後で、身体にどのような変化が起こったかを調べる実験が行なわれました。
検査の結果、血液中の免疫細胞の働き=免疫力が高まっていることが判明したのです。
とくに注目されたのは、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化でした。
これは別名『がんの殺し屋』とよばれ、がん細胞を直接攻撃したり、また細菌を死滅させるなど、免疫機能の強力部隊です。
つまり笑いは、NK細胞の後方支援を担っているわけですが、そのメカニズムは図のように考えられています。
笑えば痛さもふき飛ぶ!
同様の研究は、リウマチ患者を対 象にも行なわれました。
たっぷりと落語を聴いたあとでは、鎮痛剤が手放せないほどの重症患者の大部分が、「痛みが楽になった」と口を揃えたのです。
事実、血液検査でも、痛みの原因物質や炎症を悪化させる物質が、大幅に減少していました。
これは一つには、笑いの作用により、β工ンドルフィンという痛みを和らげるホルモンが、脳から大量に分泌されるためと考えられています。
『脳内モルヒネ』とも称されるこのホルモン、効果は麻酔用のモルヒネの数倍といわれ、また長時間持続すると考えられています。
実験後3週間も鎮痛剤なしという、劇的な効果が現われた患者もいたそうです。
笑えばストレスも解消!
おもに内臓の働きをコントロールしている自律神経には、2つの種類があります。
血圧や心拍数の上昇など、緊張・興奮状態をもたらすのが交感神経。
それと相反する作用をし、緊張を解いて休息状態にするのが副交感神経です。
この2つの作用がバランスよく働いていれば、心身を健康的な状能に保つことができるのです。
笑いには、自律神経のバランスを整える効果があります。
笑っているときは交感神経の作用が高まっていますが、笑ったあとは、逆に副交感神経が優位に働き始めます。
こうしたスムーズな切り替わりは、ストレスの解消や内臓の働きを高めるのに、とても有効なのです。
笑いは内臓のジョギング!
実は笑っているときは、腹筋を始め、僧帽筋(背中)、大胸筋(胸)など、さまざまな筋肉を使っており、いわば有酸素運動をしているようなものなのです。
カロリーの消費量も図のとおり、なかなかのものです。
また、とくに大笑いをしているときは、自然と横隔膜を使って腹式呼吸をしています。
この呼吸法は、内臓機能の活性化や血行の促進、リラクゼーションなど、健康によい効果をもたらすといわれています。
効果は笑いの質を問わず!
とはいっても、そうそう心の底から笑えるものでもありません。
でもご安心あれ。
たとえ作り笑いであっても、その効果は変わらないことがわかっているのです。
大切なのは、まず笑顔を心がけること。
その練習として、顔の筋肉をほぐす『笑顔トレーニング』を、毎朝実践してみてはいかがですか。
笑顔をつくるときのこれら筋肉の動きが、脳に対する刺激となり、笑いのすばらしい効果へとつながっていきます。
出典:うちの薬箱