漢方医学(中医学)からみた更年期障害
漢方医学の古典では、女性は7年を基数として成長・老化すると考えています。
閉経は、7年×7=49歳前後に迎えますが、その前後に一連の更年期症状が出現します。
生理異常や自律神経の調節異常や神経・代謝の異常で、煩躁して怒りっぽい、驚きやすい、不眠傾向、動悸など精神情志の変化が現われます。
漢方医学(中医学)では、腎(ホルモン系)の衰退から衝・任脈が虚して天癸が尽きることにより、生理が閉止して一連の変化が生じると考えています。
更年期にどのような身体症状や精神症状が生じるかは、この時期に至るまでの生活環境や飲食の傾向、身体的あるいは精神的な消耗の程度や様子などにより異なります。
少し専門的になりますが、以下のようなタイプに分類されます。
詳しくは、漢方百草園薬局までお問い合わせ下さい。
更年期障害のタイプ別漢方療法
タイプ | 更年期障害の症状ほか | 代表的な漢方薬 |
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Aタイプ | 腎陰が不足すると、衝・任脈が虚し、血海に陰血が充満するのが遅くなる。そのため生理が遅れ、ついには閉経に至る。さらに陰血が不足すると陰虚陽亢を呈する。めまい、耳鳴り、腰膝部のだるさ・脱力感、腰痛、寝汗、手掌や足底のほてり、手足のしびれ、顔面紅潮、視力低下、耳鳴り、口やのどの乾燥感などの症状を伴う、 舌質紅、舌苔無… |
杞菊地黄丸、知柏地黄丸、六味地黄丸、一貫煎、左帰飲、左帰丸、二至丸 |
Bタイプ | 腎陰が不足して心を涵養できず、心陰虚を引き起こす。そのため相対的に心陽が旺盛となり、心火となって激しく燃え上がる(心腎不交)。 動悸、不安感、焦燥感、不眠、多夢、健忘などを伴う、 舌質紅、舌苔乾… |
天王補心丸、黄連阿膠湯、朱砂安神丸 |
Cタイプ | 腎と肺は呼吸を通じて密接な関係にある。そのため陰虚火旺になると、上昇して肺を傷つけ潤いが失われる。陰虚症状の他、乾いた咳や息切れ、口やのどの乾燥感などを伴う、 舌質偏紅、舌苔乾… |
麦味地黄丸、百合固金湯、滋陰降火湯 |
Dタイプ | 腎陽虚のため衝脈・督脈が虚弱となり、陽気不足による病態を呈する。また、腎陽虚のため腎・膀胱の気化作用がうまくできなくなり、水湿が停滞し浮腫となる。元気がない、手足の冷え、寒がり、顔面蒼白、腰や下肢がだるく無力、浮腫み、頻尿、尿失禁などの症状を伴う、 舌質淡、舌苔薄… |
八味地黄丸、牛車腎気丸、右帰飲、右帰丸、真武湯、扶陽理中 |
Eタイプ | 肝の疏泄機能が失調して肝気(自律神経の働き)がのびやかでなくなれば、怒りっぽくなったり、または抑鬱の状態になる。肝鬱が化熱して上部の心神を乱せば心煩不安となる。また肝経は胸脇部に分布しているので、肝鬱により気機が阻塞されると、胸脇部と乳房の脹痛が現われる。めまい、怒りっぽい、ため息が多い、肩こり、頭痛、頭重感、心煩不安、精神的抑鬱、胸脇部や乳房の脹痛、大便がすっきり出ないなどの症状を伴う、 舌質偏紅、舌苔薄乾… |
柴胡疏肝散、加味逍遥散、逍遥散合香蘇散、血府逐瘀湯(=冠脈通塞丸)、半夏厚朴湯合香蘇散、 開気丸 |
更年期障害の漢方療法(まとめ)
病態 | |
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初期の段階 | 腎陰虚兼血瘀 |
月経が遅れ始め、月経日数が2~3日と短くなる、中には希発月経(2~3ヶ月に1回)となる。 舌質紅・・・ |
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中期の段階 | 肝腎陰虚→肝陽上亢 |
足腰のだるさ、足踵痛、手足のほてり、めまい、耳鳴り、頭痛、のぼせ、イライラ、不眠傾向、不安感・・・ (腎陰虚をベースに他臓への影響も含め、病態が多い) |
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慢性化 | 陰陽両虚 |
陰虚症状もあるが、冷えなどの陽虚症状も発生する。 舌質淡あるいは薄白・・・ (例えば、足の裏はほてるが、足の甲は冷える) |
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一般的に |
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