認知症と向き合う上で大切なことは、必要以上に不安を持たず少しずつ受け入れていくことです。
また、認知症の兆候がみられたら早めに専門医を受診し、適切なアドバイスと治療によって、症状の進行を遅らせたり、症状が進行しても穏やかに暮らすことができるよう、ご家族も一緒になって考え、共に立ち向かうことができます。
認知症の兆候
- 同じことを何度も言ったり、聞いたりする
- 慣れている場所で、道に迷った
- 料理や散歩など、日課をしなくなった
- ささいなことで怒りっぽくなった
- 時間や日付が不確かになった
- ぼんやりとしていることが多い
- 夜中に起きだして騒いだ
- 以前よりだらしなくなった
- 新聞やテレビを見なくなった
- 単純な計算の間違いが多くなった
- 頻繁にものの名前が出てこなくなった
- 水道の蛇口やガス栓のしめ忘れが目立つ
- 置き忘れや、しまい忘れが多くなった
- 以前はあった関心や興味が失われた
- 貴重品が盗まれたといって騒ぐ
- 薬の管理ができなくなった
認知症の対処法
認知症になると日常生活での支障はもちろん、高齢であれば介護の問題などもあり、本人も周りの家族もなかなか受け入れ辛いものです。
認知症の兆候に気付いても、歳のせいだと見過ごしてしまうケースも多く、また受診をためらう場合が多くみられます。
認知症の根本的なな治療法は見つかっていませんが、治療の研究は日々進化しており、有効な薬や治療法が次々と開発されています。
だからこそ、認知症も他の疾患と同じく早期発見と早期治療が非常に重要だということを、しっかりと認識してください。
例えば、症状が軽い早期に「塩酸ドレペジル」という薬を服用すれば、アルツハイマー型認知症の進行をある程度遅らせることができますし、高血圧治療薬や抗凝固薬などを用いることで脳血管性認知症の原因である脳血管障害の再発を予防することができます。
また、周辺症状(BPSD)を軽くするには、抗うつ薬や向精神薬などを用いることでその効果を期待できるのです。
脳の活性化を促す心理療法
以下のような、患者さんの精神面に働きかけて脳を活性化させる心理療法も心の安定に有効で、認知症による行動障害の改善に応用されています。
- 回想法
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グループで昔の思い出などを話し合い、過去の人生を回想することで、今の自分を認識することができる。
- リアリティ・オリエンテーション
- 日付、時間、今いる場所などを、問いかけたり伝えたりすることで、見当識を高める療法。
- アニマルアシスト・セラピー
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動物との触れ合いの中から、他のものへの関心をもってもらう。
- 音楽療法
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音楽鑑賞や楽器演奏を通じて、過去の記憶を思い起こしてもらう。
治せる認知症
認知症の様々な治療法は、早期に診断し開始することでその効果は大きくなりますが、もう一つ大切なポイントは、認知症の原因をはっきりさせるということです。
認知症の症状は、実は「うつ病」「甲状腺機能低下症」「慢性硬膜下血腫」「正常圧水頭症」などの疾患がきっかけで起こる場合もあるのです。
これらの疾患による認知症は、原因となる疾患の治療によって「治せる認知症」で、症状が治まる場合もあるのです。
このようなケースを見逃さないためにも、早期診断の必要性は大きいといえます。
認知症予防のために心がけましょう
- 食生活
- 青魚や野菜、果物を多く摂るようにし、減塩を心がけると良いです。
肉や乳製品はアミロイドβの凝縮を促進するといわれているため、控えましょう。
また、海馬を活性化させるために、よく噛んで食事をしましょう。 - 認知症予防におすすめの食品
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柿、キウィ、グレープフルーツ、イチゴ、カボチャ、ほうれん草、アーモンド、またコーヒーや緑茶も効果的です。
- 有酸素運動
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有酸素運動により、アミロイドβたんぱくを分解する酵素ネプリライシンが増えます。
週に5日、30分程度の運動を生活に取り入れましょう。 - 生活習慣の見直し
- タバコは脳梗塞の原因ともなり、脳の機能を低下させます。
少量のビールや赤ワインは認知症に良いとされていますが、お酒や夜更かしはほどほどにしましょう。 - 頭を使う
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手帳や日記を付けるようにし、趣味があり、刺激の多い生活を送ることが予防につながるとされています。
積極的に外出したり、人とコミュニケーションをとるようにし、いきいきとした生活を送ると良いでしょう。