ガンの漢方医学的治療でのガンのタイプ別治療法と代表的な漢方薬について解説いたします。
病機については、気滞血瘀・熱毒内結・痰湿結聚・臓腑失調などによって発ガンすることが、最も重視されています。
ガンのタイプ別漢方療法
タイプ | ガンの症状ほか | 代表的な漢方薬 |
---|---|---|
Aタイプ 肝気鬱結 |
肝の疏泄機能が乱れ、または鬱怒・憂思などの情動が長期的あるいは過度的に肝に気機を乱したりして、気鬱・気結を引き起こす。 胸脇脹痛、乳房脹痛、情緒不安、食欲不振、あるいはゲップ、梅核気、月経不順などの症状を伴う。 |
逍遥散合香蘇散、四逆散、柴胡疏肝湯、血府逐瘀湯(=冠脈通塞丸)、半夏厚朴湯合香蘇散、開気丸 |
Bタイプ 気滞血瘀 |
気滞(肝気鬱結)の上、さらに血行不良となったり、血行障害で気滞を続発させたりして、気血の停滞が生じて来る。 胸脇脹満・脹痛または遊走性の疼痛、腫瘍が拒按、顔色や口唇や皮膚が暗、舌質紫暗、瘀斑、月経不順や経血が暗紫色で血塊が多いなどの症状を伴う。 |
血府逐瘀湯(=冠脈通塞丸)、四逆散合桂枝茯苓丸、柴胡疏肝湯合血府逐瘀湯 |
Cタイプ 瘀血積聚 |
血瘀が生じると血行不暢となり、特定の部位に滞り、塊にように結集する。 腫瘍の増大と石様に硬い、固定性疼痛、圧痛、顔色や口唇が紫暗、舌質紫暗、瘀斑、肌膚甲錯、あるいは消痩、発熱、出血など。 |
大黄牡丹皮湯合桂枝茯苓丸、血府逐瘀湯(=冠脈通塞丸)、冠元顆粒、冠心逐瘀丹、宝宮泉 |
Dタイプ 痰気凝結 |
濁または湿毒の侵入、肺・脾・腎の陽気の減退、肝の疏泄作用の低下などは、湿が痰に濃縮し、気機のめぐりが障害して気滞も生じてきたわけである。 腫れたリンパ節・乳腺・甲状腺または皮膚などの腫瘍、赤腫熱痛はないが、痰涎、吐き気、嘔吐、膨満感などの症状を伴う、 舌質胖大、歯痕舌、舌苔白膩滑… |
半夏厚朴湯、四七湯、安中散合呉茱萸湯、消瘰丸 |
Eタイプ 湿熱壅盛 |
飲食の不摂生、湿や熱邪の侵入、脾胃・肝胆の気機失調と絡んで湿熱が体内で盛んで停滞してしまうようになる。 慢性的微熱、多汗、吐き気や嘔吐、食欲不振、身体がだるい、胸腹痞悶、下痢気味、または黄疸などの症状を伴う、 舌質紅、舌苔黄膩滑… |
茵陳蒿湯、竜胆瀉肝湯 |
Fタイプ 瘀毒熱結 |
侵入した熱毒と体内で生じてきた?血と絡み合ったり、停滞した?血と毒邪がしばらく鬱結して熱化となる。 発熱持続、口渇、ほてり、イライラ、冷飲食を好む、あるいは顔面紅潮、頭痛、出血などの症状を伴う、 舌質紫紅または紅絳、舌苔黄燥… |
大柴胡湯、茵陳蒿湯、桃核承気湯 |
Gタイプ 気血両虚 |
邪気の停滞により内蔵機能と体内の気血を損耗し、または脾胃からの気血生化を妨害することで、気血の虚弱を引き起こす。 倦怠無力、顔色淡白または萎黄、身体の消痩、動悸、息切れ、食欲不振、めまいなどの症状を伴う、 舌質胖大、歯痕あるいは嫩… |
加味帰脾湯、人参養栄湯、十全大補湯 |
Hタイプ 陰虚内熱 |
もともと陰虚傾向の体質、または熱毒の邪気が体内の津液を損耗することによって、陰虚を引き起こし陰虚陽亢の状態で内熱が生じてくる。 午後の潮熱、五心煩熱、虚煩不眠、盗汗、咽喉の乾き、消痩、濃縮尿、便秘傾向などの症状を伴う、 舌質紅絳、舌苔少… |
知柏地黄丸、麦味地黄丸、杞菊地黄丸 |
Iタイプ 脾腎陽虚 |
ガン毒の停滞によって諸内臓の陽気を傷つけ、特に脾腎の陽気を損傷させることで、生体の免疫能が低下する。 顔面晄白、寒がり、手足の冷え、息切れ、疲労倦怠、足腰の疼痛、腹痛、消化不良、浮腫み、頻尿または排尿困難などの症状を伴う、 舌質暗痰、胖大、歯痕、舌苔白滑… |
牛車腎気丸、八味地黄丸合平胃散、扶陽理中、補気升陽、鹿茸大補湯 |
※いくつかのタイプの混合タイプがよくみられます。