健康志向が高まるなか、
「老化を早める活性酸素」「活性酸素が病気を招く」・・・
というようなことが、よくいわれます。
ところで、活性酸素って何なのか、皆さんはご存知ですか?
今回は、病気の元といわれる活性酸素を解明します!
活性酸素ってどうしてできるの?
私たちが生命活動をするには、体内でエネルギーを産生しなくてはなりません。
火が燃えるのと同じ原理で、エネルギーを生みだすには酸素が必要です。
エネルギーは、酸素と他の物質が化学反応を起こし生まれるのです。
その化学反応の結果、副産物としてできてしまうのが活性酸素です。
ですから、酸素を必要として生きる以上、活性酸素の発生を止めることはできません。
ちなみに、体内に取り込まれた酸素のうち、約2%が活性酸素になるといわれています。
活性酸素と酸素って何が違うの?
酸素原子の結びつき方が違います。
一般的にいわれる、体内で発生する活性酸素には、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素の4つがあります。
通常、酸素は、酸素原子が2つくっついている状態で存在しています(図1)。
<図1 酸素>
<酸素原子(O)> 不対電子は、ペアになれない電子 |
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<酸素分子(O2)> 不対電子は、他の電子を求めている |
しかし、水素原子と結合するなどして、 酸素原子が(図2)のような結びつき方(分子構造)になることがあります。 この4つの分子構造に変わったものが、活性酸素です。
<図2 活性酸素>
<スーパーオキシド> 酸素の電子が1つだけペアを見つけ、不対電子1つをもった状態 |
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<過酸化水素> 水素原子と結合し、不対電子はなくなるが、不安定で2つに分かれやすい |
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<ヒドロキシルラジカル> 酸素原子と水素原子が1つずつ結合し、不対電子を1つもつスーパーオキシドや過酸化水素から発生し、最も酸化力が強い活性酸素 |
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<一重項酸素> 不対電子同士がペアになっているので、不対電子はないが、1つの軌道に電子がなく、2つの電子を求めている状態 |
酸素の仲間なのになぜ身体に悪いの?
ここでちょっと、科学の勉強を思いだしてみましょう。
すべての物質の元である原子は、中心の「核」とその周りを回る「電子」で構成されています。
この電子は2つずつ、ペアになって回りたがる性格です。
しかし、酸素原子にはペアになれない電子(不対電子)が2つあります。
[2つならペアになれると思われるでしょうが、ここは相性が悪い電子同士と考えましょう。]
この2つの電子は、いつもペアになる電子を求めていることから、酸素原子は2つ結びついています(酸素分子)。
ところが、酸素分子でも2つの電子にはペアになる相手がいません(図1)。
だから近くにある他の分子から電子を奪います。
電子を奪われたほうは、分子構造が変化(化学反応)してしまい、こちらもまた電子を求め、電子の奪い合いが連鎖的に広がっていきます。
このような電子を失う化学反応を「酸化」といいます(図3)。
酸化は、金属の錆びなど日常生活のあらゆる場面で見ることができますが、体内でも起こっているのです。
活性酸素は電子を求める力が酸素よりずっと強く、近くの分子から手当たり次第に電子を奪っていきます。
活性酸素は、このような反応を細胞を構成する成分などにも起こし、身体の中を酸化(錆び)させてしまうのです。
ただし、活性酸素には生命活動に不可欠な役目もあり、そのひとつは殺菌・解毒作用です。
実は身体の免疫システムは、細菌や解毒を感知すると、これらを活性酸素で攻撃しています。
活性酸素の、あらゆる物質と反応する性質は、身体を守ることに役立っているのです。
つまり活性酸素は諸刃の剣で、毒にも薬にもなります。
しかし、現代は活性酸素が発生する原因が多い環境(図4)にあるため、 身体を守る以上に身体を傷つける存在となってしまいました。
抗酸化物質って何?
活性酸素と同じくらいよく聞かれる言葉です。
抗酸化物質とは、活性酸素を酸化力のない分子構造に変えてしまう、つまり活性酸素を取り除く物質です。
抗酸化物質は、活性酸素が欲しがっている電子を与えやすい形になっているので、細胞が酸化されたりする前に、自分の電子を活性酸素に与え、酸化力を打ち消してしまいます。
最近は、抗酸化物質のことを、活性酸素を取り除くところから、スカベンジャー(”掃除屋”の意味)ともいいます。
私たちの身体は、うまくできていて、活性酸素を生んでしまう一方で、 抗酸化物質(おもに酵素)をつくる機能もちゃんと備わっています。
ただし、それだけでは活性酸素を除去するのに不充分です。
しかも、抗酸化物質をつくる働きは20代を境に衰えてきます。 そのため、抗酸化物質を食物からも摂取する必要があります。 それらはご存知の、ビタミンやファイトケミカルなどです。
活性酸素を増やさないためには、抗酸化物質を摂取するだけでなく、発生源をできるだけ避けることも必要です。
現代人にはむつかしいことがほとんどですが・・・。
また抗酸化物質は、いろいろなものをバランスよく摂るのがポイント。
そのため食物から摂取するのがお勧めです。