ED(Erectile Dysfunction)とは、男性の性機能障害の1つで、 満足な勃起が得られない状態をいいます。
日本の患者数は約1,130万人と推計され、成人男性の4人に4人が当てはまる計算です。
にもかかわらず、男性にとってはデリケートな問題だけに、1人で悩んでいる人が多いのでは?
あなたのために、そしてパートナーのためにも、EDを正しく理解し、改善の一歩を踏みだしましょう。
EDのメカニズム
EDは専門的にいうと、「性交時に充分な勃起やその維持ができず、満足な性交が行なえない状態」と定義されています。
では、どのようにしてEDは起こるのでしょうか。
男性器の勃起には、神経と血管の働きが深く関与しています。
性的刺激を受けた脳は、神経を介して男性器に信号を送り、陰茎海綿体という部分の動脈を拡げて、血液を送りこみます。
スポンジ状の海綿体は、血液を吸いこむことで大きくふくらみ、正常な勃起が起こります。
この仕組みのうち、神経のどこかにダメージを受けていたり、また動脈の拡がりが不充分で血液の流入が足りなかったりすると、勃起障害、つまりEDの原因となるのです。
EDが起こる原因
EDは、年齢とともに患者さんの割合が高くなりますが、実は年のせいだけでなく、さまざまな原因が潜んでいるのです。
器質性ED
身体の病気や外傷などによって起こるタイプです。
最近とくに多いのは、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が背景となっているケースです。
これらの病気をもっていると、血管の老化である動脈硬化が急速に進行し、血液の循環が悪くなります。
それが陰茎海綿体の動脈にも起こって、充分な血液が供給できず、EDを引き起こすことになるのです。
さらに糖尿病の場合は、末梢神経の障害という合併症があり、脳からの信号が男性器に伝わりにくくなることも、関係しています。
その他、脳出血、脳腫瘍、パーキンソン病などの神経が障害される病気や、外傷による脊椎損傷も、原因として挙げられます。
加齢に伴って患者さんが増えるのは、自然な老化による男性ホルモンの減少に加えて、これらの病気を起こしやすい年齢だということが、大きな要因となっています。
心因性ED
何らかの心理的な問題が原因となっているタイプで、比較的若い世代から中高年まで、幅広くみられます。
精神的ストレスや大きな不安を抱えていると、神経が性的な興奮をうまく男性器に伝えられず、EDが起こりやすくなります。
仕事上のトラブル、夫婦関係や家庭問題の悩み、性に関するコンプレックス、かつての性行為の失敗、妊娠や性感染症への恐怖など、誘引となるストレスは、人によってさまざまです。
また、うつ病や神経症といった心の病気でも、性機能は低下します。
薬剤性ED
別の病気の治療薬を服用していると、その副作用によって、EDが起こる場合があります。
高血圧治療のための降圧薬、心臓病に用いられる抗不整脈薬、胃薬の一種である消化性潰瘍治療薬、気分の落ちこみを改善する抗うつ薬、前立腺肥大症の治療薬などが、EDに影響を及ぼす可能性があります。
EDを治療する
EDは、多くのケースで、治療によって改善することができます。
性生活に不満を抱いている方は、1人で悩まずに、前向きに治療を考えてみてはいかがでしょう。
すぐに専門医を受診するのに抵抗があるなら、かかりつけ医に相談してみましょう。
EDの診断
EDの診断は、まず患者さんが性機能に関する問診票に記入し、その回答をもとに、さらに医師が問診をして行ないます。
原因として生活習慣病が疑われる場合には、病状を確認するため、尿検査や血液検査を実施することもあります。
EDの治療
治療は、基本的に内服のED治療薬を用います。
現在使用されている薬は3種あり、それぞれの特性に照らして、より自分に合った投薬治療を受けることが可能です。
服用することで性交がうまくいき、それが自信につながって、症状が改善される例が多くみられています。
また、併発している生活習慣病がある場合は、その治療を同時に行なったり、心因性であれば、カウンセリングを併用することもあります。
ただし、ED治療薬には、いっしょに服んではいけない薬があったり、病気によっては服めない場合など、使用上の重要な注意点があります。
薬は必ず医師に処方してもらい、指示に従って服用してください。
最近では、インターネットでED治療薬が違法に販売され、その多くが偽造品であることも判明しています。
もちろん、服用するのは大変危険ですので、医療機関や薬局以外からは購入しないようにしましょう。
また、これらEDの治療については、健康保険が適用されない自由診療になりますので、費用の面などは、前もって問い合わせておくとよいでしょう。
自己チェックしてみましょう
過去6ヶ月の状況で、YesまたはNoで答えてください。
- 勃起後、挿入するのに充分な硬さになりますか?
- 性交が終わるまで、勃起を維持することができますか?
- 常に勃起を達成し、維持することができますか?
- 毎回の性行為に満足していますか?
1つでもNoがあれば、医師に相談してみてはいかがでしょう。
(※これは医療機関で用いられているED問診票ではありません。)
前向きな気持ちが大切
EDの治療・予防には、他の病気と同じく、 積極的にライフスタイルを見直すことも大切です。
まず、生活習慣病対策として、食生活のバランスや運動習慣を心がけたり、自分なりのストレス解消法を身につけるようにすると、大きな効果があります。
一方で、暴飲暴食、お酒の飲みすぎ、タバコの吸いすぎには、充分注意してください。
なるべくゆったりできる時間をもつようにし、睡眠もしっかりとりましょう。
また、恥ずかしいかもしれませんが、夫婦やパートナー同士で、性生活について話し合うことは、とても重要です。
EDは、決して男性側だけの問題ではないからです。
正直な気持ちを打ち明け合って、お互いを理解し、協力してもらいながら治療に取り組む・・・
こうしたパートナーシップこそが、ED改善の近道だといえるのです。
焦らず、悲観的にならず、二人三脚で乗り越えていくようにしましょう。