社会不安障害(SAD)とは
日常生活の中で、私たちは様々な心配と不安を抱えながら暮らしています。
本来、このような不安感や恐怖心というものは、動物が生きていくために命を守らなければならないという本能にも由来するもので、必要な感情です。
しかし人間には、命に加えて社会的な不安というものも常に抱えて生活しています。
「まわりから批判をされるんじゃないか」「恥をかいてしまうんじゃないか」などといった自分以外の人との関係に対する不安です。
このような対人関係の不安が、人によっては大きな恐怖となったり、場合によっては身体的な異常を発症し、日常生活を続けることが困難になることもあります。
このような状態を「社会不安障害(SAD)」とし、性格的な内気や恥ずかしがり屋ではなく心の病気だと考えられています。
対人恐怖感
多くの人が、人前で話すのが苦手であったり、見られていると感じると緊張したり、というような経験があるでしょう。
普通はこのような不安感があるからこそ、失敗しないように、不快感を与えないように、笑われないように、と自分をコントロールできるのです。
ところが、ある時そのような状況に立たされて突然、強い恐怖感を感じ、緊張や不安感だけでなく身体症状まで現われることがあります。
そして、このような経験をすると次にはさらに強い恐怖感が生まれ、だんだんと行動範囲も狭くなり、日常生活に支障をきたすようにもなります。
このような状況に陥った人は、不安感から発症した心の病気、社会不安障害(SAD)が疑われます。
性格と決めつけない
社会不安障害(SAD)は、近年まであまり理解されていませんでしたので、多くの場合、患者自身も周りも病気だという認識はなく、『内気』『恥ずかしがり』な性格だからと思われていました。
しかし、社会不安障害(SAD)は性格の問題とは違います。
社会不安障害(SAD)の人は、病気だという自覚があるなしにかかわらず、他者からの自分への評価や感情が非常に気になります。
上手く人前で話せなかったとか、気にしている自分の癖を指摘された、など社会不安障害(SAD)発症のきっかけは些細なことの場合がほとんどです。
普通であれば、繰り返し場数を踏むことで慣れてきたり、次第に上手くできるように心がける程度で済みます。
しかし、ある時の失敗や指摘などが大きな出来事として強く記憶に残り、次に同じ状況になった時に、「また失敗したらどうしよう」「変な癖がある人だと思われるんじゃないか」と必要以上に緊張してしまうことがあります。
もちろん、これくらいの状態では病気とはいえません。
社会不安障害(SAD)の場合、その緊張感や不安感が極めて強く、そのような精神状態のために発言や行動がいつも通りにできなくなります。
そして、大量に発汗したり、手や身体が震えるなどの身体症状が現われてきます。
すると、このような症状によってまた「様子がおかしいと気づかれているのではないか」と気になり、緊張感と不安感がさらにエスカレートするという悪循環に陥るのです。