漢方の源は中国ですが、歴史的経過から2つに分かれ、日本漢方と中医学があります。

どちらの不妊症の漢方治療でも、

「排卵誘発効果のある漢方薬のうち、体質に合ったものを服用することが原則」

「漢方薬を併用することで、ゴナドトロピン製剤の使用量を減らすことが可能」

「不定愁訴も同時に改善できる”副作用”を期待できる」

という部分は共通しています。

日本漢方での不妊症の漢方治療

五行論

日本漢方では、陰陽論・五行論・気血水論などの理論を基本にして、体質や体調などから「証(薬を決めるための物差しになるもの)」を見極め、その「証」にのっとった漢方治療を行います。

この方法は、月経周期と関係なく、実証なら療方調血・桃核承気湯など、虚証なら当帰芍薬散・温経湯・ 療方調律など、多くの処方が用いられ、妊娠しやすい体質を作っていきます。

keihi桂皮bukuryou茯苓

臨床では、温経湯には脳からのゴナドトロピン分泌を促進して排卵を促す作用が、加味逍遥散や当帰芍薬散には卵胞ホルモンや黄体ホルモンの分泌量を増やす作用が、芍薬甘草湯には多嚢胞性卵巣症候群や高プロラクチン血症による排卵障害や早発月経に有効だと報告されています。

当帰当帰芍薬芍薬

軽度の男性不妊に対しても、造精機能を高める目的で、漢方薬が用いられています。

療方昇陽には精子の運動率を改善する効果が、八味地黄丸には精子の数を増やす効果が、療方調血には精索静脈瘤を改善する作用があると言われています。

akayajiou地黄chinnpi療方昇陽より 陳皮

中医学を用いた「漢方周期療法」

中医学(中国の伝統医学)と西洋医学の長所を取り入れた「中西医結合医療」として、 中国では不妊治療の場に積極的に導入されており、日本でも最近普及しつつあります。

基礎体温を付けながら、月経周期(月経期・卵胞期・排卵期・黄体期)に応じて漢方薬を服み分けていく、これが不妊症に対する「漢方周期療法」です。

従来の漢方治療よりも妊娠率を高めようとする新しい治療法です。

詳しくは、次項の『不妊症「漢方周期療法」とは?』をご覧下さい。

また、「漢方周期療法」ではありませんが、中医学による「弁証論治」を用いた不妊症漢方治療法があります。

少し専門的になりますが、虚証(腎陽虚・腎陰虚・気血両虚)と実証(肝鬱・痰湿・温熱・血瘀)に分類されている治療法で、「漢方周期療法」と併用した方がより結果が得られる場合もあります。

腎陽虚には毓麟珠、腎陰虚に養精種玉湯、気血両虚には十全大補湯や人参養栄湯、肝鬱には開鬱種玉湯、痰湿には啓宮丸、湿熱には清熱調血湯、血瘀には少腹逐?湯、などがもちいられます。

人参(にんじん)人参ougi人参養栄湯より 黄耆