坐骨神経痛の概要

日本人の国民病ともいわれる腰痛ですが、その原因は様々で、腰を構成している腰椎や椎間板、靱帯や筋肉などのどこかに障害が起こり腰痛になります。

そんな腰痛の中で、腰椎や椎間板に障害がある場合は特に坐骨神経痛を伴う腰痛も少なくありません。

坐骨神経とは、腰椎から出て骨盤を通り臀部から太ももやふくらはぎなど脚の裏側を通っている神経で、この坐骨神経に沿って起こる痛みを総称して坐骨神経痛と言います。

腰痛では、引きつるような脚の痛みを伴ったり、臀部から脚にかけてのしびれを感じたり、冷えや灼熱感などの知覚異常が現われたり、また足腰の脱力感などの症状が起こり、重症化すると運動麻痺が起こる場合もあります。

また、痛みやしびれの度合いや発生部位は坐骨神経の障害度によって違い、臀部だけなど局所的に痛む場合や、片側の脚だけ痛む場合など様々です。

坐骨神経腰椎の構造

坐骨神経痛の原因

腰の疾患で坐骨神経痛を併発するいくつかの症状の中で多いのが「腰椎椎間板ヘルニア」と「腰部脊柱管狭窄症」で、その他には「脊椎分離症」「脊椎すべり症」「変形性脊椎症」などがあります。

ここでは、代表的な「腰椎椎間板ヘルニア」と「腰部脊柱管狭窄症」を例に挙げて坐骨神経痛の原因について解説していきます。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

「椎間板(ついかんばん)」とは、いくつも重なって脊柱を構成する「椎体」同士をつなぐクッションの役割を担う部分です。

椎間板の中心部には「髄核」というゼリー状の軟らかい部分があり、髄核は「線維輪(せんいりん)」という丈夫な組織よって包み込まれています。

腰椎の椎間板の役割は、体重を支えたり生活での様々な運動による大きな圧力を受け止めることですが、無理して重いものを持ったり、前かがみの姿勢を続けたりと、過剰に強い力が加わることで、ついには線維輪に亀裂が生じ、椎間板の中の髄核が後方へ飛び出してしまい、椎間板ヘルニアとなってしまいます。

椎間板の中から飛び出した髄核は下半身につながる坐骨神経を圧迫し、急性の強烈な腰痛や坐骨神経痛、しびれなどが起こりますが、どちらか片側の脚だけに現われるという特徴があります。

椎間板ヘルニアは若い人から高齢者まで、幅広い年齢層で起こります。

腰部脊柱管狭窄症

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「脊柱管」とは、背骨(脊柱)の背中側にある空間の部分のことで、脳から続く神経の束(脊髄)が通っており、その脊髄から神経が枝分かれして下半身へと伸びています。

この脊柱管が狭くなり、中を通る脊髄の神経が圧迫されることで起こる様々な障害による病気が「腰部脊柱管狭窄症」です。

脊柱管の狭窄は特にお年寄りに多くみられ、老化による骨や椎間板の変形が原因と考えられています。

腰部脊柱管狭窄症の症状としては、腰痛や坐骨神経痛がよくみられますが、その他に「立っていたり歩いたりしていると、 脚に鉛が入ったようにだるくなり、前に進めないようになってしまうが、少ししゃがんで休むと症状が軽くなり、また歩けるようになる」というような歩行困難の症状もみられます。

この歩行困難の症状は間欠跛行(かんけつはこう)と呼ばれ、腰部脊柱管狭窄症の特徴的なものですが、その他の病気が原因でも間欠跛行は起こるため、専門医の診断を受ける必要があるでしょう。